2006/02/14

タクシン首相危機一髪

タイの上院議員グループがシンコープ株売却に絡みタクシン首相が憲法に抵触したと提訴した件について、タイの憲法裁判所のチュムポン判事は12日、これを受理する見通しだと述べたとのこと。
容疑を裏付ける十分な証拠が存在するかどうかは定かではないが、有罪となれば、タクシン氏は首相の位置を失うことになる。

また、民主党のシリチョーク議員は13日、シンコープ株売却で関心が集まっているアンプルリッチ社が登記上の所在地に存在しないことが判明したとして、実在の会社がどうか調査するよう商務省に要請したらしい。
英領バージン諸島で登録された同社は、住所がシンガポールとされているが、同議員が現地でチェックしたところ、その住所にはほかの会社が存在し、この会社はアンプルリッチについてなにも知らなかったという。

The Nationのサイトでは2月1日付けで下記の様にまとめている。

タクシンは732億バーツ(2,200億円)相当のシン・コーポレーションの株式を実質「無税」で売却し、子供達への遺産相続も果たしたとしているが、その過程でいくつかの疑惑が持ち上がっている。

その1つはタクシンが自分の財産を管理する会社として、英領バージン諸島(タックス・ヘイブン地域=ほとんど税金がかからず、資産隠しで有名)にアンプ ル・リッチ・インヴェストメント(Ample Rich Investment=有り余る金持ちのための投資会社という意味)なるペーパー・カンパニーを設立。

同社は米国からの資金調達のために設立したのだとShin Corpのブーンクリー社長は語っているがその運営は謎に包まれている。

アンプル・リッチ社は1999年4月12日に設立された。その会社の設立者と所有者はタクシン氏であったが、2000年11月30日までに同社の株を手放し、今は所有者ではないと答えている。

SEC(証券取引監視委員会)も誰に売却したのかは明らかにしていない。この頃、タクシンの資産隠しがメディアでしきりに報道された時期とかななる。

1999年6月11日にタクシン氏は自分が所有していたShin Corpの株3の半分に相当する3億2920万株(11.875%)をこのアンプル・リッチ社に売却した。

アンプル・リッチ社の株式は当時は100%タクシンが所有していた。すなわちここでShin Corpの株式所有者の名義変更が一部おこなわれたわけだが、実際に所有していたのはタクシン氏であった。この売却でタクシン氏はアンプル・リッチ社から 代金を受け取ったかどうかは不明。

この段階で、タクシン氏は依然として3億2920万株(11.875%)のShin Corp株を所有していたが、それも誰か(不明)に売却したとされる。

愛国党の党首のタクシン氏は2001年1月6日におこなわれた選挙で大勝し、首相の座に着いた。タクシン氏は汚職撲滅委員会の2001年4月に彼の資産を報告した。そのときはアンプル・リッチ社の件については一言も触れられていない。

Shin Corpのウエブ・サイトで2005年8月26日に突如として、チナワット タクシン夫人とダマポン氏(タクシン氏の実兄)が同社の株式の49.61%に 当たる14億8774万120株を所有していると発表した。「家族」所有のなかにはアンプル・リッチ社の持ち株3億2920万株(10.98%)が含まれ るという。

これは、タクシン氏がアンプル・リッチ社の株式を全部売却したという言い方とは明らかに矛盾があり、「資産隠し」の虚偽に報告を汚職撲滅委員会にしたとい う疑惑が出てくる。それら一連の疑惑についてはタクシン自身から近々釈明があるといわれている。(2月14日現在明確な釈明はない)

今年1月20日になって、アンプル・リッチ社の所有するShin Corpの株式3億2920万株が半分ずつピントンガ(Pinthonga)とパントンテ(Panthongtae)に1株1バーツで売却されたことに なっている。その3日後にこれらの株は全てシンガポール政府の持ち株会社テマセックに売却された。

この売却益は150億バーツ以上になるが、彼らは3億2920万株の株式を店頭取引(over-the counter)でアンプル・リッチ社から買って、証券取引所でテマセック社に売却したのだから税金はかからないという仕組みだそうである(タイでは市場 での株式売買による利益には税金はかからない)。

最初はピントンガとパントンテは株式市場からShin Corpの株式を購入したとSECには説明していたが、それは「間違い」であって、店頭取引(over-the counter)でアンプル・リッチ社から買ったのだと訂正している。

しかし、SECとしてはピントンガとパントンテに対し、いつ実際に株を買っていつから持っているのか?また、所有した段階でなぜSECに報告しなかったのかなどいくつかの質問を出しているという。

これらが明らかにならないと彼らは「公開法(disclosure law)」で定める5%以上の株式所有はSECに届け出るという法律に違反した疑いが生じる。また、インサイダー取引の疑いも当初から持たれている。

これらの疑惑は意外に大きな問題でタクシンの政治生命にもかかわりかねない事件に発展する可能性もありうる。要するに、タクシンは自分の財産を何とか税金を逃れて、子供に相続させようと考えたのである。

また、2001年4月の「資産公開時」にタクシン氏およびその家族が不正な報告をやっていた可能性がある。それは彼の蓄財方法が必ずしも明確なものではないからであろう。


うーん、根深い。
どうなるのでしょう。たぶん、今月中になんらかの動きが。

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